老人ホームに勤務する看護師が辞めたい悩みとは? 相談内容や転職先を紹介

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病院から介護系施設へ転職した看護師が、仕事を辞めたいと思うような悩みに直面するのは珍しくありません。たとえ看護スキルが高くとも、職場環境が変われば悩みの中身も変わるものです。ここでは介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなどの介護施設に、看護師として就職した人の悩みとその解決法をご案内いたします。

老人ホームで働く悩み

看護師として老人ホームで勤務する中で、どのような悩みを抱えるでしょうか? 介護施設という独特な環境では、病院だと考えられないようなことが原因で深刻な悩みに陥ることがあります。

ワンオペになりがち

老人ホームと病院では、まず看護師の人数が全く異なります。一般的な老人ホームでは看護師の数が少ないため、相対的に看護する入居者数が多くなるでしょう。小規模な老人ホームではたった一人のワンオペ状態で全入居者をケアすることもよくあります。自分のキャパシティを超える人数の多さだと、体力が続くかわからないといった悩みの原因になることがあります。

医師が常駐していない老人ホームがある

老人ホームの中では介護老人保健施設や介護療養型医療施設なら1人以上の医師が常駐しています。また、病院やクリニックに併設された介護施設なら医師が実質常駐している環境といっていいでしょう。これらに対して、例えば特別養護老人ホームでは医師が非常勤であることが多いです。すぐ身近に相談できる医師が常駐していないため、看護師にかかる重い責任に悩むこともありかもしれません。

夜勤なしの場合は病院勤務より給与が低めになる

介護施設での就業は給与体系が病院と全く異なります。ボーナスも施設ごとに設定されていますが、病院ほど優遇されているとは限りません。同じ看護師の仕事なのに…と職種に対する給与格差に不満を感じることがあります。給与以外の労働条件の中に働きがいを見いだせるかどうか、が長期就業のポイントになります。

介護の仕事も手伝う必要がある

老人ホームで働いていると、看護師といえどもある程度は介護業務を兼任する必要が出てきます。排泄・入浴介助は訪問看護や療養型病棟でなら経験があるかと思いますが、老人ホームでは介護士と連携しながら毎日必ず行います。医療行為以外の仕事でも抵抗なく続けられる性格なら悩む心配はないでしょう。

看護対象が高齢者しかいない

病院との大きな違いとして、老人ホームで看護師がケアする人は、当然ですが介護を要する高齢者に限定されます。もし若い人や子供への看護経験も積みたいといった希望を持っていたり、処置する対象が高齢者だけの職場には抵抗があるようなら、求人応募を再考してはいかがでしょうか。

看護技術のスキルアップにつながりにくい

老人ホームで看護師が行う業務は軟膏を塗ったり、湿布を貼ったり、ストーマの排泄物を捨てたりといった療養が中心となります。また、体温や血圧の測定、歯磨きや爪切りの補助のような健康管理も日常的です。病院で毎日行うような投薬、採血、点滴は医師の指示を必要とし、入居者に急変が出たりしなかった日はほとんど医療行為を行わないこともあります。看護師として今後スキルアップを目指したい人にとっては、病院ほど看護の経験値を得られない老人ホーム勤務に不満を感じるかもしれません。

老人ホームの看護勤務を辞めたくなる瞬間

老人ホームで働く看護師のつらさは、病院と違う労働条件にあります。

介護の仕事がつらくなる

介護施設で働くと、時には看護師であっても介護関連のお手伝いをすることがあります。純粋に看護だけをして働きたい人には向いていないかもしれません。

病院と異なる人間関係

病院では主に医師や看護師長の指示に従って動きますが、介護付有料老人ホームの環境では基本的に医師は常駐しておらず、少ない看護師が各自で主体的に判断して進めます。

病院よりも低い給与

老人ホーム勤務で夜勤がない場合、施設によっては看護師の給料が病院より低くなる傾向にあります。もし激務であっても髙い給与を受け取りたいなら、病院勤務のほうが希望年収に近づける確率が高くなります。または、富裕層向けの高級志向な介護施設を探してみるのもよいでしょう。

相談相手になる看護師が少ない

有料老人ホームの人員配置基準は介護保険法で定められています。例えば、入居者30人までの介護付有料老人ホームは、看護職員を最低1人以上配置することを義務付けられています。現場にもよりますが、1人の看護師で10人以上の要介護者を担当することは珍しくありません。困ったとき、対応が難しいときに相談相手になれる他の看護師がいない心細さから、この職場を辞めたいという気持ちが生まれることもあります。

病院にはなく老人ホームにあるメリット

様々な点で病院と異なる老人ホームですが、そこで働くメリットもあります。病院と介護施設を比較すると給料が低めになるデメリットがありますが、それと差し引きしても働く理由になりそうなメリットをご紹介します。

医療業務が病院よりは(比較的)少ない

老人ホームでは入居者の健康管理が中心となります。日々のバイタルチェックや身辺ケアが主な仕事内容です。また、医師の指示を必要としない軟膏塗布やストーマケアといった療養を行います。病院の療養型病棟に勤務した経験があれば、馴染みやすいかもしれません。一方、医師の指示を必要とする静脈注射や投薬はありますが、急変時以外はあらかじめ処方された通りに処置するので、迷う場面は少ないほうです。

介護の技術を磨くことができる

看護師は介護福祉士ではありませんが、介護の現場に従事した経験を持っていると今後求人の選択肢が広がります。今後も高齢化社会は進行する見込みであり、介護施設での看護師需要もさらに高まっています。将来的な就職先の間口を広げておくのは悪い選択ではありません。

どうしても老人ホーム勤務を辞めたいときは…

老人ホームにおける看護師の役割は病院と異なるため、そのギャップに悩まされることも多いはずです。今の職場をどうしても辞めたくなったら、どのような選択肢があるでしょうか。

一旦多めの休暇を取る

長く看護のお仕事を介護施設で続けていると、たとえどんな仕事内容であっても嫌になる時期があるものです。そんなときは、可能であれば長期のお休みをとりましょう。数年勤務していて、その間あまり休んでいなければ、有給休暇が十数日程度残っているかもしれません。

介護の経験を活かせる病院やクリニックの療養型病棟に就職する

介護施設で働いた経験は無駄にはなりません。病院やクリニックの療養型病棟では、まさに介護の経験こそが必要とされています。看護師の中には老人ホームで働いた経験がない人もいますので、そうした介護未経験者に比べると相対的に評価される傾向にあります。

病院でも介護施設でもない、新しい職場に転職する

病院も老人ホームもこりごり、という看護師の方には、それら以外の看護の職場が合っているかもしれません。例えば、健康診断センターでの血圧測定や採血の看護業務、一般企業内の医務室などに専属となる産業看護師、ワクチン接種会場での注射の打ち手などがあります。自分にとって無理のない職場を選びましょう。

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